# 整数環とは何か
整数環 $\mathcal{O}_K$ は、数体 $K$ の中にある「整数らしい元」全体の集合です。
数体とは、有理数体 $\mathbb{Q}$ の有限次拡大のことです。
たとえば $K=\mathbb{Q}(i)$ や $K=\mathbb{Q}(\sqrt{5})$ は数体です。
## 整数らしい元
$K$ の元 $\alpha$ が代数的整数であるとは、$\alpha$ が整数係数のモニック多項式の根になることです。
$
\alpha^n+a_{n-1}\alpha^{n-1}+\cdots+a_1\alpha+a_0=0
\qquad (a_i\in\mathbb{Z})
$
このような $\alpha$ 全体を集めたものが、$K$ の整数環です。
$
\mathcal{O}_K=\{\alpha\in K\mid \alpha \text{ is an algebraic integer}\}
$
## 例
もっとも基本的な例は、ふつうの整数です。
$
\mathcal{O}_{\mathbb{Q}}=\mathbb{Z}
$
ガウス整数の世界では、整数環は次の形になります。
$
\mathcal{O}_{\mathbb{Q}(i)}=\mathbb{Z}[i]
$
つまり、$a+bi$ という形の数たちです。
$
\mathbb{Z}[i]=\{a+bi\mid a,b\in\mathbb{Z}\}
$
## 何が変わるのか
$\mathbb{Z}$ では、素数は因数分解の基本単位でした。
けれど、整数環を広げると、同じ素数がそのまま素数であり続けるとは限りません。
たとえば $\mathbb{Z}[i]$ では、
$
5=(2+i)(2-i)
$
となり、$5$ はもう分解してしまいます。
整数環とは、整数を捨てる場所ではありません。
むしろ、整数を別の世界へ運び、その世界で何が保たれ、何がほどけるのかを見る場所です。
次は [[素数はなぜ分解するのか]] へ進みます。